多汗症治療の病院は何科?手術や薬の費用は保険適用できる?
多汗症の治療方法として、まずは食事や運動などでの体質改善やツボ押しでの対策を試してみることをおすすめしましたが、これらの方法は効果が現れるまでに時間がかかります。
「早く治す」には、やはり病院での治療(手術、投薬)が最適ですが、治療を受ける場合は何科に行けばいいのか?どんな治療でどれくらいの費用がかかるのか?保険適用は?など病院での多汗症の治療方法と費用についてまとめてみました
まずは多汗症の症状チェック
多汗症のタイプ
多汗症には、病気が原因で起こる「続発性多汗症」と、原因がはっきりしない「原発性制多汗症」があります。
また、症状にもいくつかのタイプがあり、汗をかく場所によって病名・治療方法も異なります。
- 手掌多汗症
- 足底多汗症
- 腋窩多汗症
- 顔面多汗症
- 頭部多汗症
多汗症のレベル
多汗症は症状の程度により、塗り薬で治るものから手術をしないと治療できないものまでレベルが3段階にわけられています。
- レベル1(軽度の症状)
- よく見ると表面が濡れていることがわかる状態
- レベル2(中度の症状)
- 濡れた部分のところどころに水滴が見られる状態
- レベル3(重度の症状)
- 水滴が溜まり、汗がしたたり落ちるような状態
多汗症治療の病院は何科?
初診なら皮膚科
自分が多汗症であるかどうか、そうであれば何が原因なのか、診療してみないとわかりませんが、まず最初は皮膚科を受診するのがよいでしょう。
皮膚科で診察の結果、専門的な治療が必要であれば他の病院を紹介してくれる場合もあります。
持病があるなら内科
糖尿病や甲状腺の病気、更年期障害などが原因で多汗症になる場合もあります。
これらの持病がある方(病気の可能性が考えられる場合)は内科を受診し、汗かきの原因になる疾患ではないか診断してもらうことも必要です。
精神的なストレスなどは心療内科
ストレス・緊張・不安などで汗をかくことも多くあります。こうした状況で大量の汗をかく精神性発汗がおもな方は心療内科を受診される方法もあります。
ただ、心療内科・精神科への通院は、就職・保険加入などでのデメリットも少なからずありますので症状の度合いを見ての判断が必要です。
多汗症の治療方法
ここでは原因がはっきりしない「原発性多汗症」の治療方法について紹介します。
治療の種類(診療ガイドライン)
多汗症には治療方法がいくつもありますが、治療の優先順位は『診療ガイドライン』で決められています。
診療ガイドラインとは、厚生労働省が診療方法や治療方法など医師や病院で格差が出ないようにするために決めた標準的な指針の事で、よほどのことが無いかぎり同じ症状なら診療する病院・医師・診療科の違いによって治療方法が大きく違うことはありません。
症状の程度によって治療の順番を決めているので、軽度の症状の患者にいきなり手術を進めたりするようなことはありません。
多汗症の治療方法を症状の軽いものから順に並べると以下のような種類が挙げられます。
塩化アルミニウム制汗剤の塗布
症状が比較的軽い人の治療の方法で、アルミニウム配合の外用制汗剤を患部に直接塗布する方法です。
この薬には汗を止める作用があり、汗の出るところに1日1回塗るだけで、軽度の方であればこれだけで汗が気にならなくなる効果がありますが、人によっては皮膚の炎症が起ることがあります。
- 向いている部位
- 手のひら・足のうら・ワキ・ひたい
- 費用
- 保険適用外で4,000円~6,000円
イオントフォレーシス治療(イオン浸透療法)
手のひらなど多汗症の患部を水道水が入った容器に浸し、そこに弱い電流を流し電気分解によって発生した水素イオンにより汗腺からの汗の生成を抑える治療法です。
大きな副作用が無く体への負担は軽微ですが治療には時間がかかります。 初めのうちは週に数回通院し、効果が出始めたら週に一回の通院で数週間程度は集中的な治療が必要です。
- 向いている部位
- 手のひら・足の裏
- 費用
- 健康保険適用あり受診1回あたり1,000円程度
ボトックス注射(ボツリヌス毒素局所注射)
この方法は、汗が出て来る場所にボツリヌス毒素を注射する治療法です。
人はアセチルコリンという神経伝達物質が汗を出すように汗腺に信号を伝えることで発汗しますが、注射によりアセチルコリンという神経伝達物質の働きを阻害し、神経伝達を遮断することで発汗を防ぐ方法です。一度注射すると4か月~6か月間効果があり汗をかかなくなります。
メスを使わずに、注射で一時的に汗腺を麻痺させるだけなので傷跡やアザが残らず、炎症も腫れもなくすぐにいつも通りの生活に戻れます。施術の時間も短時間であまり時間が取れない人に向いています。
デメリットとしては治療の費用が高いことと、処置を施した部位の汗が止まることで他の部位から汗が増える「代償性発汗」が起こることが挙げられます。
- 向いている部位
- 手のひら・足の裏・ワキ・ひたい
- 費用
- ワキの下の治療で症状が重い場合に限り保険適用(3割負担)で約3万円が目安です。※軽症は適用外
ワキ以外の部位は全額自費負担で8~10万円くらいが相場となります。
病院によっては複数回実施できる割引料金制度を導入しているところもあります。
飲み薬・服用薬プロバンサイン
多汗症の治療薬としてファイザー製薬から販売されているプロバンサインという薬があります。
プロバンサインは、多汗症の薬の中で唯一認定されているもので病院でも治療薬として使われています。
この薬は、アセチルコリンという物質の動きを抑制することができ、脳からの「汗をかく」という指令を一時的に止めることができます。
また、この薬の特徴(メリット)としては、即効性があり服用から一時間で効果が出て全身に効果が及ぶことです。一度の服用で全身の汗を抑えることができ、手・足・脇・顔などまとめて制汗対策をすることができます。
ただし、プロバンサインは制汗効果が高い分、副作用も感じやすい薬ですので、薬のメリットやデメリットを把握したうえで用法を守って使用することが大事です。 通販ショップなどでも買えますが、医師に相談して処方してもらうのがおすすめで、
- 向いている部位
- 全身
- 費用
- 保険適用(3割負担)で1,500円~2000円/100錠で入手できます。
通販ショップなら100錠、4,000円~6,000円
レーザー治療(ミラドライ)
レーザー治療は健康保険の使えない自由診療で、主に美容外科・美容クリニックなどで行われている治療法で、メスを使わない手術方法として「ミラドライ」などが話題です。
電子レンジなどと同じマイクロ波を水分の豊富な汗腺にあて、熱エネルギーでエクリン汗腺やアポクリン汗腺を破壊する仕組みになっています。
施術を受けた人の90%以上の方が汗の量が半分以下になったという口コミや評判もありますが、まだ新しい治療方法で導入している病院やクリニックも限られています。
- 向いている部位
- ワキの汗
- 費用
- 健康保険は適用されず全額自己負担で約30万円くらいかかります。
ETS(腔鏡下胸部交感神経遮断手術)
重症の患者に対して行う治療で、胸部交感神経を遮断(切断)する手術のことです。
手術により発汗はピタリと止まり、効果は一生続きますが、副作用としてその他の部位からの発汗が多くなる代償性発汗が起こりますので、手術前に医師によく確認し理解したうえで行う必要があります。
- 向いている部位
- 手のひら・ワキの下
- 費用
- 健康保険適用はありますが、手術費用約10万円と入院に伴う費用が必要で高額になります。
ただし、高額医療費返還手続きをする事で、基準額を超えた医療費は戻ってきます。
基準額や手続きの方法など詳しいことは加入している保険の担当窓口で確認できます。
部位別の推奨治療法(軽症の方)
軽度の多汗症の方の場合、部位別の推奨治療法は下記の通りです。
ワキの汗
- 塩化アルミニウム制汗剤の塗布
- ボトックス注射
ワキは場所的にイオントフォレーシスが行いにくい場所ですので、塩化アルミニウム制汗剤を使ってみて、治りにくい場合はボトックス注射をおすすめします。
手や足の汗
- 塩化アルミニウム制汗剤の塗布
- イオントフォレーシス治療
塩化アルミニウム制汗剤は1日1回自宅で塗るだけですので、簡単でおすすめの治療法です。
また、通院の負担が大きいのは大変ですが、手や足はイオントフォレーシス療法が行いやすい個所で、効果も期待できます。
ボトックスは強力に汗を減らしてくれますが、手や足に注射するのは非常に強い痛みを伴いますので、医師に良く聞いたうえで決めましょう。
頭・頭皮の汗
- ボトックス注射
頭からの汗を気にされる方も多くおられます。効果が高いものがボトックス注射です。
ボトックス注射を行っている病院や美容外科などに事前に問い合わせをしてから行かれることをおすすめします。
治療方法と費用・保険適用まとめ
治療の方法 | 種類 | 対象の症状 | 頻度 | 保険適用 | 費用 |
---|---|---|---|---|---|
塩化アルミニウム制汗剤 | 塗り薬 | 軽度 | 毎日塗布 | 無し | 4000円~6000円 |
イオントフォレーシス治療 | 電気イオン治療 | 軽度 | 最初週2-3回通院、 | 有り | 通院1回当たり1000円 |
ボトックス注射 | 注射 | 軽度~中度 | 4-6か月毎に繰返し | 重症のみ 適用有り | 保険で3万円 全額自費8-10万円 |
服用薬プロバンサイン | 飲み薬 | 中度 | 毎日服用 | 有り | 1か月約2000円 |
ミラドライ | 電磁波治療 | 中度~重度 | 1回~2回の施術 | 無し | 30万円位 |
交感神経遮断 | 手術 | 重度 | 1回 | 有り | 手術費用10万円 入院費用は別 |
自分でできる対処法~市販薬の利用
多汗症と言っても軽い症状で、病院へ行かずに自分で治療したいという方には市販薬もありますのでご紹介します。
制汗剤はロールオンやスティックタイプの方が、より効果が強いといわれています。
アルミニウムを含む市販薬
市販されているアルミニウムを含む制汗剤では以下のような商品がよく使われています。
市販薬の使用方法
汗の出ていない状態で塗る
できるだけ汗の出ていない状態で皮膚に塗布します。
汗をかいた状態では薬剤が落ちやすく、また汗と薬剤が混じってかぶれたりするのを防止できます。
寝る前に塗ると効果的
最も効果的なのは、寝る直前に塗ることです。
リラックスしているため日中にくらべ汗の量が少なくなっていることもありますが、薬を塗った後はしばらく手が使えなくなるため寝ている間のほうが効率もよくなります。
手のひらに塗った薬は、翌朝起床時に洗い流します。睡眠中に薬の作用は働いていますので朝に洗い流しても構いません。手袋をして眠ると布団や衣類に薬剤が付着せずおすすめです。
効果の確認と継続
早ければ1週間くらいで効果が現れます。一旦効果が現れたら、しばらくの間(1週間から10日)効果が続きます。その時点で一度使用を中止し、効き目がなくなるまで待ってみます。 こうして薬の有効期間がどれくらいなのか確認しておき、その後は有効期間の間隔ごとに1-2回塗るだけで効き目が持続します。
3週間以上経っても効果が現れない場合はその薬では効果が無い(症状に適さない)と考えられます。
副作用に注意
皮膚が弱い人は、かゆみが出たりかぶれたりすることがありますので、塗る量や塗る回数は必要最小限にするよう気をつけましょう。