個人型確定拠出年金の控除による節税額は?掛金の上限は?
個人型確定拠出年金は、所得控除で節税ができる!と話題の年金制度ですが、実際にいくらぐらい税金がお得になるのか?口座管理の手数料や一時金受け取り時の控除・掛金の限度額などとあわせて詳しくシミュレーションしてみました。
個人型確定拠出年金の掛金限度額
個人型確定拠出年金として拠出できる掛金には上限が設けられているため、限度額以上の拠出はできません。また、掛金の上限は加入者の種類によって異なります。
加入者ごとの掛金上限金額
- 自営業者・個人事業主の掛金上限
- 月額68,000円/年額816,000円*1
- 専業主婦の掛金上限
- 月額23,000円/年額276,000円
- 会社員(企業年金加入なし)の掛金上限
- 月額23,000円/年額276,000円
- .会社員(企業型DCのみ加入)の掛金上限
- 月額20,000円/年額240,000円
- 上記以外の会社員および公務員の掛金上限
- 月額12,000円/年額144,000円
*1)国民年金基金に加入している場合、その掛金と合わせて月額68,000円までが掛金上限(拠出限度額)になります。
個人型DCは当初、厚生年金や退職金が無く老後が不安な自営業者の方たちを救済するための制度として作られたものであり、自営業者の方は掛け金の上限が高く設定されています。
最低拠出(積立)額と単位
拠出する際の最低金額は月額5,000円以上で掛け金は1,000円単位です。
拠出する額は変更が可能で、毎年4月~翌年3月の間に1回だけ変更することができます。
個人型確定拠出年金は全額「所得控除」対象
一般的に所得税や住民税は「課税所得金額」に税率を掛けて計算します。
課税所得金額を計算する場合、まずは収益から経費を引いた総所得金額を算出します。
総収入―諸経費=総所得金額
そこから各種所得控除を差し引いた金額が課税所得金額となります。
総所得金額―所得控除額=課税所得金額
所得控除というのは、
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 医療費控除
- 寄付金控除
- 配偶者控除
- 基礎控除
などで、これらに該当する支出がある場合、総所得金額から控除(差し引き)できますので、課税所得金額が少なくなり、税金の負担が軽減されます。
個人型DCの拠出金は全額がこの所得控除の対象になります。
では、実際に所得控除を受けた場合の節税額はいくらぐらいになるのでしょうか?
所得控除による節税額をシミュレーション
この制度の最大のメリットは税制面での優遇措置が適用されることですが、控除によりどれくらいの節税効果があるのか、以下に具体的な所得・掛金を例に挙げて計算(シミュレーション)してみました。
40歳自営業で課税所得400万円の場合
課税所得金額が400万円(330万円~695万円)の場合の税率は、
- 所得税:20%
- 住民税:10%
合計約30%の税金がかかりますので、税金額は約120万円です。
(平成28年の場合※実際は復興税もかかります)
仮に確定拠出年金の掛け金を月額5万円とすると年間で60万円となります。
この60万円が所得控除となりますので、課税所得金額は400万円―60万円=340万円となり、税金額は340万×30%=102万円に減ります。
節税額は120万円―102万円=18万円となります。
40歳で加入し同じ条件で60歳まで継続すれば、18万円×20年で約360万円の節税効果があります。
ただし、口座管理手数料や受け取り時の振込手数料・退職所得(もしくは年金)として税金がかかるため若干目減りはします。 ※のちほどご説明してます
個人型確定拠出年金の手数料の目安
加入時 | 口座管理手数料 | 合計 |
---|---|---|
2,777円+ | (月500円×20年)= | 約122,777円 |
月々の口座管理手数料は金融機関・証券会社によって異なるので、SBI証券や楽天証券など安い手数料で運用できるサービスを選ぶのがおすすめです。
30歳サラリーマンで課税所得250万円の場合
課税所得金額が250万円(195万円超300万以下)の場合の税率は、
- 所得税:10%
- 住民税:10%
で合計約20%です。
(平成28年の場合※実際は復興税もかかります)
確定拠出年金の掛け金を月額2万円とすると年間で24万円です。この24万円が所得控除となりますので、節税効果は24万円×20%=4.8万円になります。
仮に30歳で加入し月額2万円の拠出を60歳まで30年間継続すれば、節税効果は4.8万円×30年=144万円になります。
参考資料:所得税の税率と税額表
課税所得金額(A) | 所得税税率(B) | 控除額(C) |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円~330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円~695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円~900万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円~1800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
※課税所得の税額はA×B-Cで算出
個人型確定拠出年金は運用益も非課税
通常の金融商品の利益(定期預金の利息・投資信託の配当・株式の売買益など)にも、所得税+住民税+復興税がかかります。
ですが、この個人型確定拠出年金では運用で得た利益も非課税となっているため税金がかからずお得です。
運用益非課税の節税効果の例
仮に30歳で加入し毎月2万円年間24万円積み立てし、利回り2%で運用できたとすれば、20年間で約100万円の運用益が得られます。
通常ならこの100万円に20%つまり20万円の税金がかかりますが、非課税扱いになりますので、20万円全額が節税となります。
つまり、個人型確定拠出年金は所得控除+運用益非課税のダブルで節税効果が出るお得な制度です。
給付金受け取り時にも控除アリ
60歳になって給付金を受け取る際にも「退職所得控除」「年金控除」という優遇措置適用されます。
給付金(一時金)は「退職所得控除」の対象
給付金を全額一時金で受け取ると「退職所得」となり税金がかかりますが、税金を計算する際は一時金全額ではなく「退職所得控除」を差引き後の金額が課税対象となります。
この退職所得控除は加入年数に応じて限度額が決まっております。
退職所得控除額の限度額
加入期間 | 限度額 |
---|---|
20年以下の場合 | 40万円×加入年数 |
20年超の場合 | 800万円+70万円×(加入年数-20年) |
退職所得控除適用による節税シミュレーション
40歳で加入し毎月2万円を拠出し20年間運用した場合
利回り2%で運用できたとすると、年金資産は元本480万円+運用益100万円―口座管理費用約10万円で約570万円くらいに予測できます。
これを一時金で給付を受けた場合、所得税はどうなるかというと退職所得控除が無い場合の税額は一時金額570万円÷2☓税率を当てはめると、所得税10%+住民税10%で税金は約47万円になります。
退職所得控除を適用すると、一時金額570万円―退職所得控除800万円(加入期間20年)=△230万円となり
税金はかかりませんので48万円全額を節税できます。
40歳で加入し毎月5万円を拠出し20年間運用した場合
年金資産は元本1200万円+運用益約120万円―運営管理費約10万円で、約1,310万円くらいになると予想できます。
退職所得控除がない場合、税額は一時金額1310万円÷2×税率(所得税20%+住民税10%)で税金は約153万円になります。
退職所得控除を適用すると、(一時金額1310万円―退職所得控除800万円)÷2=255万円が課税金額となります。
これに所得税10%、住民税10%がかかりますので合計の税額は約42万円になり、 節税効果は153万円―42万円=111万円になります。
税金42万円も払うの!と言われるかもしれませんが、前述の通り所得控除の節税効果が360万円あることを考えれば42万円支払っても総額では完全にプラスです。
給付金(年金)は年金控除の対象
60歳になって受け取る際に一時金ではなく年金で受け取る場合、年金は雑所得として課税されますが、 個人型DCから受け取る年金は年金控除の対象になりますので、これを適用することで課税所得額が低くなり節税できます。
年金(雑所得)の課税所得額の計算方法
年金収入の金額(A) | 割合(B) | 控除額(C) |
---|---|---|
70万円迄 | ― | 700,000円 |
70万円~130万円 | 100% | 700,000円 |
130万円~410万円未満 | 75% | 375,000円 |
410万円~770万円未満 | 85% | 785,000円 |
770万円以上 | 95% | 1,555,000円 |
※年齢が65歳未満の方用
計算式:(A)☓(B)-(C)=課税所得額