土用のうなぎは旬じゃない!?なぜ丑の日に食べる?意味と由来
土用の丑の日は旬の「うなぎ」を食べて夏バテ予防!と鰻の蒲焼きや白焼きを楽しみにしている方も多いと思いますが、じつはこれには間違いがあるんです。
夏が来ると鰻屋さんはどこも繁忙期で、土用の丑の日は1年のなかでも一番の稼ぎ時。でも、鰻屋さんは知っていますうなぎの旬が夏ではないことを。。。
なぜ土用の丑の日にうなぎを食べるようになったのか?「土用」「丑の日」の意味や由来とあわせて、うなぎマーケティングの裏側をご紹介。
土用の丑の日の意味・由来
すでにご存知かもしれませんが、まずは「土用」と「丑の日」について簡単にご説明。
『今日は丑の日だから、牛を食べよう!』などと、おやじ’sジョークを飛ばす希少種の方もまだほんの少しおられるかと思いますが、実はその考え方もあながち間違いではないようです。
土用の意味
日本では古くから木・火・土・金・水(もっかどごんすい)の五行思想が暦にも取り入れられ、春夏秋冬それぞれも春=木気・夏=火気・秋=金気・冬=水気で表されてきました。
そのなかで土気は、季節の変わり目の四立(立春・立夏・立秋・立冬)に割り振られ、土旺用事(土用)と呼ばれるようになりました。
つまり、土用は次の季節が始まる前の18日~19日間を指します。
丑の日の意味
丑の日は、十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)の「うし」を指します。
日本の暦には、五行思想とあわせて十干・十二支(干支)が採用されていて、年の干支だけでなく月干支・日干支そして時刻にもそれぞれの名前が割り振られています。
つまり、毎日十二支のどれかにあたり「丑の日」が12回に1回巡ってきます。
土用の丑の日はいつ?時期・期間
土用といえば、夏の土用というイメージが強くありますが前述のように四季の終わりにそれぞれあるので春土用・冬土用・秋土用も存在します。
夏土用の期間は、立秋前の18日~19日となるので最低1回、場合によっては2回「土用の丑の日」があります。
2016年夏の土用と丑の日
2016年夏の土用の期間は7月19日~8月6日で、丑の日は7月30日のみとなっています。
土用の丑の日にうなぎを食べるのはなぜ?
土用の期間や丑の日の意味はわかりましたが、ではなぜ夏の土用丑の日に「うなぎ」を食べるようになったのでしょう?
夏バテ予防に栄養のある食べ物
夏の土用は暑さの厳しくなる7月末から8月の初旬にかけてですので、この時期の夏バテ予防・熱中症対策としても栄養価の高い食べ物を摂取することは健康の面からも昔から推奨されてきました。
うなぎは栄養価も高く、この時期に摂るスタミナ料理としては申し分ないとも言えます。
「う」のつく「黒い」食べ物
五行思想に基づくと、四季それぞれの土用に食べると縁起のいい(パワーがもらえる)おすすめ食材があり、夏の土用には「う」のつく、「黒い」食材がよいとされてきました。
見た目にもあきらかに「黒い」、「う」のつく食べ物といえば連想できるものが昔の時代では限られていたという点も。
そして、うなぎが食べられるようになった由来は・・・
平賀源内マーケティングが由来
これもかなり有名な話ですが、江戸時代の天才学者「日本のダビンチ」とも言われる平賀源内が、夏場の売り上げに悩むうなぎ屋の相談で「何かいい案がないか」と相談されたところ、土用の丑の日にはうなぎを食べるべし!と宣伝を行ったことがその由来とされています。
日本人は、石村萬盛堂の「ホワイトデー」や、デビアスの「婚約指輪は給料の3ヶ月分」など、企業のプロモーションやマーケティングに流されてできた習慣が多々ありますが、「土用の丑の日にうなぎ」はそのはしりだったのでしょう。
そもそも、夏場にうなぎの売り上げが減っていた原因は・・・
夏土用時期のうなぎは旬じゃない!?
夏の土用時期になると「うなぎ」の売り出しが近くのスーパーや、牛丼屋でさえも行われまさに今が旬!な売り込みようですが…
天然うなぎの旬は冬
天然物のうなぎは10月ごろから冬眠に向けて栄養を蓄えることから、12月までの冬時期が旬といわれ、とくに産卵で川を下ってくる雌の鰻が一番美味しいとも言われています。
逆に、春から夏にかけては風味が落ちる時期として昔は消費量も落ちる時期でもありました。
縁起のいいものとしてこじつけるだけで、夏場のうなぎが旬だと思いこまされていることを知っていただけたかと。
ちなみに、
養殖うなぎは夏でも旨い
天然物と違って養殖ウナギは養鰻場での環境調整がしやすく、夏場でも脂ののった美味しい鰻を提供することができるようになりました。
しかも、現在市場に出回っているうなぎのほとんどが養殖物ですので、夏の土用時期でも冬場とさほど変わらない品質で食べられるようになりました。
でも
天然物・養殖物で味は違う?
やっぱり天然物は違うねぇ!という方もおられますが、お子さまや女性の方には養殖物のほうが人気です。
天然物はどこで育ったのかがわかりづらく(海でも川でも育つので)、川魚特有の臭みがあったりします。
養殖物は臭みが少なく、脂乗りもいいので幅広い年代層に食べやすいうなぎとなっています。
最近では有名な浜名湖のうなぎも養殖が多くなり、天然物は年々減っています。
ちなみに
うなぎの産地はどこがおすすめ?
うなぎで有名な産地といえば浜松・浜名湖や鹿児島・志布志のほか愛知、高知などがありますが、じつはうなぎの産地というのは獲れたところではなく「育ったところ」になります。
うなぎの稚魚(シラスウナギ)は、太平洋の黒潮にのってやってくるのでそれを捕獲して、養鰻場で飼育しますので育ったのは浜名湖でもじつはどこで生まれたうなぎかはわからない場合が多いです。
ですので産地にこだわるよりも、養殖場の設備がしっかりしていたり、水質管理がよいところを選べば臭みのない美味しいうなぎを食べられます。
それでもやはり、人が作った商売で旬でないものを食べるのも癪なので、うなぎ以外の土用におすすめの食べ物をまとめてみました。
土用うなぎ以外の行事食
夏が旬の「土用しじみ」
うなぎと違ってまさに7月から9月が旬の「しじみ」※しじみの旬は夏と冬の2回あります。
ちょうど産卵期に入るので栄養価も高く、うなぎよりも古くから夏土用の健康食材として摂られてきた「腹ぐすり=食べる薬」とも呼ばれるおすすめの食べ物。
糖と小豆で夏バテ予防「土用餅」
土用餅と呼ばれますが、普通のあんころ餅です。あんこで糖質を補給して暑い夏のエネルギー源にできることと、その糖を小豆に含まれるビタミンB1がエネルギーに替えることで夏バテ予防によい昔ながらの機能性食品です。
栄養価の高い「土用卵」
土用の期間に生まれる卵は、有精卵が多く栄養価が高いという理由から「土用卵」も古くから食べられてきました。
スタミナ満点「黒毛和牛」
夏を乗り切るスタミナをつけるならやっぱりお肉!とくに赤身は力の素にもなる動物性たんぱく質が豊富!うなぎにかわるご馳走としてもお肉なら文句はありません。
ということで、「本日、土用の丑の日は牛を食べるべし!」