2月中に決着!鴻海[ホンハイ]か産業革新機構か~シャープ再建問題まとめ

シャープ株式会社本社

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鴻海(ホンハイ)か産業革新機構か

鴻海精密工業グループ(以下鴻海)か、それとも産業革新構株式会社(以下産業革新機構)か
シャープが経営再建に向けてどちらに支援を要請するのか大詰めの段階にきています。

2月4日の決算発表記者会見の席上でシャープの高橋社長は
「リソースの多くを鴻海の方にかけている。2月29日を期限として交渉を進めていく」
旨の発言をし、鴻海への支援要請の方向性を示したが、12日の臨時取締役会の後で、改めて「産業革新機構との交渉も継続して行う」旨の発表を行った。

双方の提案内容には当然メリットとデメリット両方が含まれているので、シャープとしてはそれらを精査し、デメリットをいかに減らしていくのか、交渉力が問われるところである。
では、鴻海と産業革新機構とはどんな会社なのか、また、支援要請に伴うメリットとデメリットはどんなことがあるのか。

鴻海精密工業とは

スマホや薄型テレビなどの電子機器を受託生産するEMS(electronics manufacturing service)企業で、台湾に本社を置き、EMSでは世界最大手の企業である。

顧客は米アップル、中国シャオミ、米ヒューレットパッカード、ソフトバンク、ソニー、任天堂など業界を代表する企業が多く、アップルの「iPhone」、ソフトバンクのヒト型ロボット「Pepper」、ソニーや任天堂のゲーム機などを受託生産している。

2015年度12月期の売上高は約4兆4800億台湾ドル(日本円換算で約16兆円強)で、EMSとしては世界最大である。
生産拠点は中国を中心にグローバルに展開しており、従業員は80万人近くを雇用している。

創業者は郭台銘(英語名:テリー・ゴウ)氏であり、現在は該社の薫事長職にある。郭台銘氏は一代で鴻海精密工業を世界最大手のEMSに成長させた人物で台湾では有名な実業家と言われているが、ワンマンで強引な経営姿勢が特徴であり、従業員やステークホルダーとのトラブル発生のうわさが絶えない人物のようである。

また、EMSはいわば下請けの仕事であり自社のブランドを持たない企業なので世界での知名度はあまり高くはなく、そのため、郭氏は、著名なブランドを手に入れ、それを活用して事業を更に拡大したいと考えているようであり、シャープブランドは手に入れたいブランドの一つであるようだ。

鴻海の魅力

鴻海とシャープのつながりは、2012年春に始まった
シャープは2009年に液晶事業拡大のために数千億円の大規模投資を行い、堺市に100%出資のSDP(シャープディスプレイプロダクト)をつくった。

当初ソニーとの合弁契約に基づき、ソニーはSDPに1000億円を出資する予定であったが、液晶事業の先行きが不透明になり、ソニーは契約を解消してしまった。

シャープとしては、ソニーに「出資者」と「液晶パネルの購入者」という両方の期待をもって、大型投資を決断したのに、ソニーに契約解消され、SDPは苦境にさらされることになった。
これが大きく影響しシャープは2012年3月期に多額の赤字に転落し、1800億円の大型社債の償還も重なり、資金繰りが悪化し企業の存続さえ危ぶまれることになった。

そこに、手を差し伸べたのが鴻海であり、当時鴻海とシャープは資本・業務提携契約を締結し、鴻海がシャープに対し1300億円の出資をする事で合意した。

契約の概要は

  1. 出資額のうち半分を液晶製造会社のSDPに投資し、
  2. 残り半分をシャープ本体に出資する内容の契約、であった。

1のSDPへの出資は契約通り2012年7月に履行された。

出資額は660億円で、出資者は鴻海本体ではなく郭氏の所有する投資ファンドが行っている。

これにより、SDPの株式はシャープが37.6%、郭氏の投資ファンドが37.6%保有することになり、シャープと鴻海の共同運営会社となり、今でも継続運営中である。

出資後、鴻海グループは最先端の第10世代のマザーガラスを使った液晶ディスプレイの製造技術を手に入れ、SDPで製造した液晶ディスプレイを自社で製造する製品に搭載し、また自社のユーザーに液晶ディスプレイを販売し、赤字のSDPを1年あまりで黒字会社に立て直してしまった。

シャープディスプレイプロダクトは鴻海からの出資を受け入れした2012年7月に堺ディスプレイプロダクトに商号変更している。

堺ディスプレイプロダクトの2014年12月期の実績は売上2203億円、営業利益151億円、当期純利益72億円で、2年連続で黒字を計上しており、2015年12月期も増収増益の見込みと言われている。

この視点で見れば、鴻海とシャープは円滑に業務連携ができているように思えるし、鴻海グループの購買力や販売力は、液晶ディスプレイだけでなく、それ以外の製品の販売先開拓がこれから必要なシャープにとって魅力であることは間違いない。

鴻海は信用できるの?

一方、前述のシャープ本体への出資に関しては、シャープと鴻海間でトラブルが発生した。
契約では鴻海はシャープの株式を1株550円で購入することで合意しており、600億円を投じて
約1.1億株(当時の発行済株式数の約9.9%)を取得する予定だった。
しかし、シャープの2012年3月期の業績悪化によりシャープの株価が2012年8月に200円を割り込むまで値下がりしたことから、鴻海は契約の見直しを要求し、シャープに購入単価の引き下げを求めたが、シャープとしては鴻海に株式の10%超を握られることを懸念し要求をのまなかったため、鴻海は回答内容が不満であるとして出資を延期、当初通り契約の履行を求めるシャープとの話し合いはまとまらず、鴻海は履行期限の2013年3月までに支払いをせず、資本提携契約は白紙撤回されてしまった。
鴻海は契約不履行の理由を台湾国内事情で投資の承認が得られなかった為としたが、シャープとしては鴻海の対応に不満を持ち、両社間にしこりが残ることになった。
当時交渉に当たったシャープ側の役員はもういないが、シャープ側として鴻海を全面的に信用できない理由の一つがここにある。

郭台銘氏の狙い

シャープとしては鴻海の提案する条件を優先的に検討することを表明しているが、多額の出資はありがたいものの、デメリットも相当あるので、ワンマンでわがままといわれる郭氏の狙いが何であるのか慎重に検討した上でないと結論が出せないのでは、と推測する。

報道では、「現在の経営陣の続投」「事業の解体やリストラは最小限にする」というような情報が流れているが、鴻海としてどうしてもほしいのは「シャープブランド」と「IGZOに代表される中小型液晶関連の技術」ではないかと思う。シャープには液晶以外に複写機や健康環境関連商品にも優れた技術を保有しており、今後も伸びる可能性のある事業があるのに、郭氏の経営手法から考えれば、出資により過半数の株式を取得したあと、鴻海は自分の意のままにシャープの事業を見直し解体する可能性があることから、第2の三洋電機にならないよう、契約書できちんと合意できるかどうか、今後の交渉が注目される。

ただ、現在シャープの取締役は13名であるが、2012年以降に社外から取締役に就任された方が多いことから2012年当時の事情を熟知しているメンバーが少ない。鴻海からの支援を受け入れるのであれば、3年前の事件を十分分析して、鴻海の狙いや支援受け入れ後のリスク発生防止策を契約締結時に明確にしておく必要がある。

株式会社産業革新機構とは

株式会社産業革新機構は、国策により産業競争力強化法という法令を基に、2009年7月に設立された投資会社です。

現在の出資金は3000億円強で、その内の95%超を国が出資しています。
事業の目的は、新たな付加価値を創出する革新性を有する事業に対して成長資金を提供し経営参加型の支援を行う、としています 。

資金の調達は借入金と社債で行いますが、これには政府の保証がついています。

支援の仕組みは、投資対象となる事業には社会的意義や革新性と共に収益性が求められており、出資をして株式を取得し、会社の企業価値を高め、一定期間経過後に保有株を売却して投資回収を行います。

今回、「国内の液晶事業の再編統合」と「シャープの技術の海外流出防止」を主な目的にシャープへの支援を表明しています。

産業革新機構の支援案

報道されている内容をまとめると、

  1. 資金の供給 3000億円
  2. 銀行借入金について株式化と債権放棄の実施 総額3000億円
  3. 現経営陣は退陣
  4. 液晶事業の分社化、分社化後にジャパンディスプレイ(JDI)との統合合併
  5. 健康環境関連事業について東芝の白物家電事業との統合、等

が提案されています。

産業革新機構の支援案の問題点

国の機関からの支援であり、鴻海のようなワンマン経営者ではないことに加え、支援内容についても検討に値すると考える。

ただ、産業革新機構は販売力や購買力は持っていないことから、将来の経営再建するためにはすべて自力で営業努力をしていかなければなりません。

また、液晶事業の分社化、統合についても、独占禁止法上の課題が多く、実現し経営に貢献するまでには数年程度かかるのではといわれています。その間の資金繰りも懸念材料です。

さらに、銀行借入金の債権放棄についても、銀行側として、株主に対しての説明責任が果たせないとの理由で抵抗しているとの情報もあります。

産業革新機構への不満

更に、産業革新機構が株式の過半数を所有する株式会社ジャパンディスプレイ(JDI)とシャープは同業で競業しており敵対関係にある。

シャープの液晶事業は、中国市場でのスマホ用の中小型液晶の販売伸長により、2014年3月期には一旦黒字に改善したが、JDIが仕掛けた価格競争により単価の下落を招き、収益率が悪化し再度赤字に転落してしまった経緯があり、JDIに対して良い感情は持っていない。

シャープとしては、国内メーカー同士の安売り競争を止めることをしなかった産業革新機構の対応にも不満があるのは否定できない。

タイムリミットは2月末

どちらの案を受入れるか、2月末が交渉期限のリミットと公表されています。

報道では一部の内容しか公表されていませんので、双方の案のメリットとデメリットの全貌はわかりませんが、取締役会で慎重に検討し、どちらにしてもデメリットを最小限に抑えた内容で契約締結にこぎつけて、シャープ再生がスタートするよう願っています。

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